Sick City
エピローグ

 『門の神』はいつの間にか消えていた。
 正気を取り戻した静ちゃんの背中から、デイダラボッチが消える。両脚と化していた腕も元に戻り、巫女装束の普通の女の子へと戻った。
「大変なの御空ちゃん!!」
 突然そんな事を言われ、何が何だか分からない。
 いや、叶さんや蓮見など他の皆が何処かへ飛ばされたのは確かに大変な事かも知れないけど、別に探せばいい話だしとか思って戸惑ってしまう。
「そりゃまあ、みんなどっか行っちゃって大変なんだけど。それより静ちゃん平気なの?さっきまで大暴れだったじゃない」
「え?うん、私の意識がある間は大丈夫。デイダラボッチは溜め込んだストレスを力にしちゃうから、一度大暴れするとしばらくは落ち着くし……って、そうじゃなくて」
 何だか少し性格が明るくなったような?そのストレスとかが一気に発散されて、すっきりした気分なんだろうか。
「そうじゃなくてって、まず静ちゃんの事を色々知りたいよ……」
「えっとね、零二ちゃんが大変なの」
「……はい?」
 ここで飛び出す兄の名前。そういえばあの兄貴は一体全体、今何をしてるんだろう。そもそもロキとかイシュタルとかと戦っていたのは零ちゃんだ。
「多分なんだけど、違う場所に飛ばされちゃったみたいなんだ」
「ああ、うん。爺ちゃんとか叶さんとかも飛ばされちゃったみたいだからね」
「……多分、御空ちゃんが思ってる以上に深刻だと思うの」
 静ちゃんが何をそんなに深刻になっているのか、いまいち分からない。飛ばされた先が大変なんだろうか。例えば歌舞伎町のオカマバーに飛ばされたとか、北極でホッキョクグマに追い掛けられてるとか。
 しかし私のそんな能天気な想像とは違い、事態はとてもややこしい事になっていた。
「……零二ちゃんは違う惑星、それとも違う世界に、飛ばされちゃったの」


第十二話・荒神復活
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