プロローグ
とうとうこの時が来てしまった。
封じられた古の力が、私の封印を破って暴れ出そうとしている。地を裂き、山を砕き、海を割る。かつて八つの大陸を引き裂いた大いなる力だ。
それだけの大きな力を持っているというのに、その精神性は酷く幼い。それ故に力を制御出来ず、善悪も関係無く、ただ無邪気に力を振るう。それだけならまだしも、さらに狂気に侵され、ただただ破壊をもたらす恐怖の対象へと変貌を遂げてしまった。
それらの狂気はやがて宿主足る私の心をも侵し、絶えず流れ込んでくる破壊の欲求は、私から社交性や主体性を奪っていった。心は乾き、理性は崩れ、己を律する事が難しくなる。気が付けば、私の中に一つの耐え難い程の欲求が生まれている事に気付いた。
――――――――零二ちゃん。
幼い頃に、よく一緒に遊んでいた近所の子。
しかしある日起きた惨劇が、私達の関係を終わらせてしまった。私の中の荒ぶる力が、零二ちゃんのご両親を殺害してしまった。その時一緒にいた零二ちゃんすらも殺しかけ、おじいさんによって私の力は退けられた。生死の境を彷徨った零二ちゃんは意識を取り戻すと、それまでの殆どの記憶を失ってしまっていた。
それからは私達は疎遠となり、話しかける事も眼を合わせる事も無くなってしまった。でもそのせいなのか、私の中の彼の存在は日が経つに連れて徐々に大きくなっていった。
もう、我慢出来ない。
苛められたり、連れ去られたり、争いが起きたり。
私の事なんて誰も気にも留めない。
嫌い嫌い大嫌い。
世の中全て消えて無くなってしまえ。
でも何もかもが壊れる前に、零二ちゃんを手に入れよう。
もう私は我慢しない。
壊して壊して、欲しいものを手に入れるんだ。