Sick City

プロローグ

 古来より、日本各地に伝わる山岳信仰。その大元が遥か昔、縄文期よりもさらに遥か昔に形成されたものであった。何故ならば、山とは空という遥か高みに近づく場所だからだ。
 例えば世界を例に挙げれば、ピラミッドやジッグラトなどの建造物は、空を目指して造られている。しかしこれは、世界の文明というものが平坦な地形で発生している事により、周辺に高い山が無かった為に人工的に造られた『山』だった。
 しかし日本の地形は平地が少なく、山中で生活する者も多かった為、山をそのまま『利用』出来た。代表的なものに、恐山のイタコが挙げられるだろう。あの高い山の頂上でイタコ達は『霊脈』を感じ取り、地球そのものとデータ交信を行う事で、死者の霊と言われるデータにアクセスしているのだ。
 では何故、人は空を目指したのだろう。
 それは遥かな昔、山の頂より天空へ向かって打ち上げられた構造体があったからだった。それが『神域』と呼ばれる、神々の住まう高次元空間コロニーだ。
 その太古の記憶が今なお、人の遺伝子に刻まれているのかも知れない。


第十一話・雷神招来
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