Sick City
エピローグ

 再び静ちゃんを連れ去られてしまった。いくら仮面の神を倒す事に成功したとは言え、やはり本来の目的が達せられていないのは気分が悪い。
「妹を保護してくれた事、改めて感謝する。今まで敵対して申し訳無かった」
 カンナカムイは元の鳴神の姿へと戻り、私達に頭を下げた。
「いいけど、何で今まで敵になってた訳?」
「妹の事もあるが、巫女の力で普通の人間に戻れると抜かしやがった。俺を目覚めさせておいてふざけた話だったが、他の選択は思い付かなかった」
 私の疑問に鳴神はそんな答えを返してきた。どうやら彼もただ乗せられただけらしい。
「それで、今度はイシュタルだっけ?何でまた、そんなのが今になってしゃしゃり出て来るんだろう」
 仁科さんによれば、イシュタルは零ちゃんが取り逃がした敵だったそうだ。志方と契約し、常に裏で暗躍していたとされる。しかし契約者だった志方は消滅し、それでいてなお存在を保って静ちゃんを手にしたのは何をする為なのか。
「イシュタルはそもそもネットワーク管理神であった。エ・テメン・アン・キと呼ばれる神域を管理する者がどういった意図で環太平洋の巫女を連れ去るのか、何かネットワークに関係した動機だとは思うが」
 多少事情に詳しいのか、アヌビスがそんな説明をしてくれた。
「相手の都合なんざいくら頭捻ったところで分かる訳無いさ。どちらにしても情報を集め、そのイシュタルとか言うヤツを見つけ出すしか無い」
 蓮見の言葉通り、連れ去られたのだから見つけ出すしか無い。
 そこまで考えたら気が抜けたのか、身体がふらついた。
「御空ちゃん!?」
 叶さんの声を遠くに感じながら、私の意識はゆっくりと闇の底へと落ちていった。

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〜To Be Continued
第十一話・雷神招来
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