Sick City
エピローグ

「また助けられました」
 俺から楯を受け取ったエリカは、少し気恥ずかしそうにしていた。
「以外とのんびり屋なんだな――早く地獄から抜け出さないとマズイぞ」
 少し冷たい言い方かも知れないが、今は悠長に礼を言い合ってる暇は無い。
 かなりの数の悪魔共が、すぐ近くまで迫ってきている。
「安心して下さい。元の世界へ飛びますから」
 そう言ってエリカは、いきなり俺の身体を抱きしめてきた。
「お、おい」
 エリカの髪の毛がふわっと俺の鼻先をかすめ、慣れない女の匂いにドギマギしてしまう。慌てて離れようとしたが、エリカは俺の胸に顔を擦りつけながら、低い声で俺を制する。
「動かないで」
 一体何がしたいのか、訳が判らずそのまま硬直してしまう。
「……汗の匂いがします」
「……そりゃそうだろ」
 こんな事をしている場合では無いのだが。するといきなり身体が宙に浮き、抱きしめられたままで、俺達は一気に空へと飛び上がった。


第一話・女神降臨
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