Sick City
プロローグ

  もしもある日、今までと違う自分になったとしたら、それまでの自分と素直に決別出来るだろうか。
  例えばある日、恋人がこの世からいなくなったら。
  きっと嘆き悲しみ、未来の自分を想像する余裕なんて無くなるだろう。それでも時間が経てば、やがては自分の足で歩き出す。深い悲しみを乗り越えた先に、きっといい事があると思うから。
  例えばある日、突然殺され、そして生き返ったら。自分の事だけど、実は殆ど変わっていなかったりする。確かに世界の見方は変わったけど、この社会の醜さや、この国の自然の美しさに変わりは無い。
  例えばある日、人間じゃなくなってしまったら。
  ああ、きっとそれは夢に違いない。
  自分が見ている夢なのか。誰かが見ている夢なのか。それとも。
  この世は全て、夢なのか。
  夢を見ているのは男だろうか。夢を見ているのは女だろうか。夢を見ているのは皆だろうか。
  きっと誰しもが、夢を見ている。
  私が見る夢は、前世の記憶と両親の死。あなたが見る夢は、本当の自分。
  心の中にあるものだから、大切な想い出がそこにある。
  見えない手を差し出してみれば、そこには誰かがいる。だから怖がらないで、夢を見よう。
  明日になったら、きっと忘れるから。


第八話・怪鳥強襲
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